SOC 2
調査・データ
企業はなぜSOC 2対応を始めるのか?9社の声から見えた5つの理由
公開日
大手企業からの要求、セキュリティチェックの負担、内部統制の整備。SOC 2対応を開始したFit&Gap活用企業9社の回答をもとに、企業がSOC 2に取り組む5つの理由と、導入判断で確認すべきポイントを解説します。

SOC 2は、海外企業との取引やエンタープライズ向けSaaSで必要になるもの。そうした認識を持つ企業は少なくありません。
しかし実際には、海外展開だけがSOC 2対応のきっかけではありません。
大手企業から対応状況を確認された。取引先ごとのセキュリティチェックに時間がかかる。自社のセキュリティ体制を、もっと客観的に説明できるようにしたい。
SOC 2対応の背景には、こうした日々の企業間取引に直結する課題があります。
SecureNaviでは2026年5月、SOC 2対応支援クラウド「Fit&Gap」を活用し、SOC 2 Type 1レポートの受領に向けた対応を開始した企業9社を対象に、Webアンケートを実施しました。
本記事では、その回答から見えてきた5つの理由を整理し、SOC 2を検討する企業が何を判断すべきかを考えます。
1. 大手企業との取引で、SOC 2対応状況を確認されるようになった
最初の理由は、取引先からの直接的な要求です。
今回の回答では、大手企業や海外企業との取引において、SOC 2への対応を求められた企業がありました。また、SOC 2対応状況を確認される機会が増えたことをきっかけに、対応を開始した企業もあります。
従来、企業間取引におけるセキュリティ確認には、ISMSの取得状況や個別のセキュリティチェックシートなどが利用されてきました。
今回の事例で注目したいのは、それらに加えてSOC 2についても確認される場面が生まれていることです。
企業が商談を進めるうえで、サービスの機能や価格だけでなく、そのサービスがどのような管理体制で運用されているのかを説明する必要性が高まっていると読み取れます。
ただし、これは今回の回答企業で確認された事実であり、国内の大手企業全体でSOC 2要求がどの程度増加しているかを示す統計ではありません。
重要なのは、自社の主要顧客や商談先でも同様の要求が生じているかを確認することです。
2. 取引先ごとのセキュリティチェック対応を減らしたい
2つ目は、セキュリティ確認に伴う実務負荷です。
BtoBサービスを提供する企業では、取引先ごとに異なるセキュリティチェックシートへの回答が求められることがあります。
確認項目が異なれば、担当者はその都度、社内規程を確認し、関係部門へ問い合わせ、必要な証跡を集めなければなりません。
今回の9社からも、こうした個別対応の負荷を軽減したいという期待が示されました。
SOC 2レポートは、サービス提供組織の内部統制について独立した監査人による検証結果を示すものです。
企業ごとにゼロから説明するのではなく、一定の共通基準に基づいた情報を提示することで、確認業務を効率化できる可能性があります。
一方で、SOC 2レポートがあれば、すべてのセキュリティチェックが不要になるわけではありません。
取引先によっては、SOC 2レポートの対象外となる事項や、独自のセキュリティ要求を追加で確認することも考えられます。
今回の回答は、あくまで個別説明の負荷を減らしたいという企業側の期待を示すものです。実際の工数削減効果については、別途検証が必要です。
3. セキュリティ対策を「実施している」だけでなく「説明できる」状態にしたい
3つ目は、セキュリティ体制の説明力です。
セキュリティ対策を実施していることと、その管理状況を取引先が理解できる形で示すことは、同じではありません。
例えば、アクセス権限の管理、変更管理、インシデント対応、証跡の保管などについて、ルールが存在するだけでは十分に説明できない場合があります。
誰が責任を持ち、どのような手順で運用し、その実施状況をどのように確認しているのか。
こうした情報が整理されて初めて、取引先に対して体系的な説明が可能になります。
今回の回答でも、セキュリティ体制の説明力を高めることや、内部統制・証跡管理を整備することが、SOC 2対応の目的として挙げられています。
これは、SOC 2を単なる対外的な信用のためだけではなく、自社の管理体制を整理し、継続的に運用するための取り組みとして捉えていることを示しています。
なお、SOC 2レポートで検証される内容は、対象サービスやシステム、対象範囲、レポートの種類によって異なります。企業のすべてのセキュリティ対策が一律に保証されるものではありません。
4. 創業初期から、事業成長に必要なセキュリティ基盤を整えたい
4つ目は、社内体制の早期整備です。
今回の回答企業には、創業から1年以内の段階でSOC 2対応に取り組んだ企業もありました。
同社の担当者は、必要性を認識しながら十分に整備できていなかった体制構築が、SOC 2対応を通じて進んだと説明しています。
成長段階の企業では、プロダクト開発や営業活動を優先する一方、内部統制や証跡管理の整備が後回しになることがあります。
その状態で大手企業との商談が始まると、セキュリティ確認への回答や体制整備を短期間で求められる可能性があります。
今回の事例は、取引先から要求されてから対応するだけではなく、将来の事業拡大を見据えてセキュリティ体制を先に整えるという考え方を示しています。
もちろん、すべてのスタートアップが創業直後からSOC 2対応を始めるべきというわけではありません。
顧客の要求、取り扱う情報、事業の成長段階、対応に必要な費用や工数を踏まえ、着手時期を判断することが重要です。
5. 自社だけでなく、顧客の信頼を支えるサービスだからこそ必要になる
5つ目は、サービス提供者としての責任です。
今回の回答には、一般的なクラウドサービスだけでなく、AI活用型プロダクト、セキュリティ関連サービス、SaaSベンダーを支えるサービスなども含まれています。
特に興味深いのが、SaaSベンダーの裏側を支えるサービス提供企業の考え方です。
顧客であるSaaSベンダーが、自社サービスのセキュリティを取引先へ説明しようとしたとき、そのサービスを構成する外部システムや基盤の安全性も確認対象になり得ます。
つまり、自社が直接エンタープライズ企業にサービスを提供していなくても、顧客が信頼性を説明するために、自社のセキュリティ体制を示す必要が生じるという構造です。
AI関連サービスについても、取引先へのデータ管理や運用体制の説明が重要な検討事項になります。
今回の事例は、SOC 2を検討する動機が、企業の業種だけでなく、サービスが取引先の業務やシステムの中でどのような役割を担っているかによっても異なることを示しています。
9社の回答から考える、SOC 2対応を始める前の3つの確認事項
ここまでの回答を整理すると、SOC 2対応の目的は企業によって異なります。
では、自社で取り組むべきかを判断するには、何を確認すればよいのでしょうか。
① 取引先から、具体的に何を求められているか
SOC 2への対応状況を確認されているのか。Type 1またはType 2のレポート提示を求められているのか。
また、すでに商談上の課題になっているのか、将来の取引を見据えた準備なのか。
要求の内容と時期によって、対応の優先順位は変わります。
② 対外的な信頼証明と社内体制整備のどちらを重視するか
取引先への説明が主目的であれば、何をどのような形で提示する必要があるのかが重要です。
一方、社内の管理体制強化が主目的であれば、規程や統制の整備、証跡の収集、運用の継続性まで検討する必要があります。
両方を目的とすることもできますが、優先順位を明確にした方が対応計画を立てやすくなります。
③ どのサービス・システムを対象とするか
SOC 2では、どのサービスやシステム、どの統制を対象とするかが重要です。
対象範囲が曖昧なまま対応を進めると、取引先が確認したい事項と、実際のレポートが対象とする事項にずれが生じる可能性があります。
最初に、主要顧客からの要求と対象サービスを整理しておくことが重要です。
SOC 2を、企業間取引の信頼を支える共通言語へ
今回の9社の回答に共通して見られるのは、SOC 2への対応をレポート受領だけで完結する取り組みとは捉えていないことです。
取引先からの要求に応えること。セキュリティ体制を説明できるようにすること。個別確認の負荷を減らすこと。内部統制や証跡管理を整えること。
企業ごとの背景は異なりますが、いずれも事業活動と密接につながっています。
一方、今回の調査対象はFit&Gapを活用してSOC 2 Type 1レポートの受領に向けた対応を開始した9社です。無作為に抽出した企業を対象とする市場調査ではなく、SOC 2対応の国内全体での普及率や、導入効果を示すものではありません。
それでも、企業が何をきっかけにSOC 2への対応を決め、どのような成果を期待しているかを理解するための参考になります。
SOC 2が、発注側と受注側の双方にとってセキュリティ体制を理解するための共通言語になれば、企業間取引における信頼確認をより合理的に進められる可能性があります。
SecureNaviは、こうした環境づくりを通じて、日本企業がセキュリティへの取り組みを事業成長につなげられる市場を目指しています。
調査概要
調査名称:SOC 2対応に関する実態ヒアリング
調査方法:Webアンケート
調査期間:2026年5月
有効回答数:9社
対象:Fit&Gapを活用し、SOC 2 Type 1レポート受領に向けた対応を開始した企業のセキュリティ部門担当者
備考:個社が特定されない形で回答内容を一部編集・要約